鉄をめぐる民俗

第2回 「温羅と製鉄」

 古代朝鮮式山城で有名な岡山県総社市の鬼ノ城(きのじょう)。最近、門が復元され、ビジターセンターもできて訪れる人が増えています。

 この鬼ノ城には温羅(うら)という鬼が住んでいて、都から派遣されてきた吉備津彦に平定されるという伝説があります。それによると、温羅は「火を吹いて山を焼き、岩をうがち」という怪力の持ち主ですが、これは砂鉄を掘り、タタラ製鉄をするありさまをいったものでしょう。
 さらに吉備津彦が矢で攻撃すると、温羅の矢と食い合って届きません。そこで同時に二矢を射つと温羅の左目に当たるという話になっています。タタラ製鉄のとき、炉の炎の色を正確に見るため、片目で見たという話を聞きますが、温羅の姿そのものです。これはタタラ製鉄や鍛冶の神(天目一箇神)の一つ目の姿ともダブってきます。

 温羅の目から流れた血で川が赤く染まったので血吸川という—-これもカンナ流しで川が濁った姿です。温羅は製鉄の技術を持った者だと考えられます。
(立石 憲利)


前の記事へ次の記事へ

ページ上部へ戻る