鉄をめぐる民俗

第4回 「ドジョウすくい」

 古くから鉄の産地だった中国地方。鉄の原料は砂鉄で、風化した花崗岩の中に多く含まれている。花崗岩が風化した山の斜面を掘り崩し、その土砂を水路に流すと、比重の重い砂鉄は底に沈み、泥や砂は下に流れる。その方法で砂鉄を選別し採取するのをカンナ流しという。川へ行くと、川底に黒いものがかたまっているのをよく見かけるが、それが砂鉄で、その砂鉄を採取する方法もあった。民謡「安来節」で、おもしろおかしい所作をして踊られる「ドジョウすくい」は、川底の砂鉄を採取する姿を踊りにしたものといわれる。
 砂鉄の製錬は、タタラと呼ばれる小型の溶鉱炉でされる。木炭が燃やされた中に砂鉄が入れられ、さらに木炭、砂鉄というように入れていって製錬される。

 タタラは足で踏んで風を送るフイゴのことで踏鞴と書く。また、そのフイゴを用いて行う製錬場もタタラといい、漢字では鑪と書く。同じタタラでも二つの使い方があるのだ。

(立石 憲利)


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