鉄をめぐる民俗

第5回 「炭焼き長者 」

 昔話に「炭焼き長者」という運定めの話がある。
昔、長者の娘が神に祈願すると、山奥の炭焼きが夫になる人だと告げられる。娘は炭焼きを訪ねて頼み嫁にしてもらう。嫁が夫に小判を持たせて買い物にやると、途中で水鳥を取ろうと小判を投げてしまう。嫁から小判というもので値打ちのあるものだと教えられる。夫は、そんな物なら山にいくらでもあると案内する。炭焼き窯のところに、たくさんの金が掘り出されている。それから2人は大金持ちになった。

岡山県では、男の名前が「友」で、住友の起源だと説明している。四国、九州では「小五郎」が多く、他では「藤太」「藤次郎」「喜藤次」「吉次」「長次郎」などとなっていて、多くは伝説的な話になっている。
たたら製鉄には、木炭は欠かせないもので、木炭の原料になる木が近くになくなると、木のある地区へ移動して製鉄をした。「炭焼き長者」の話は、たたら製鉄と炭焼きが深く結びついていたことを示すものである。

(立石 憲利)


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