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鉄をめぐる民俗
第29回 「袈裟(けさ)斬り地蔵」
袈裟切りというのは、刀で、一方の肩から斜めに他方のわきの下へかけて斬り下げることをいう。袈裟懸けに斬るともいう。
吉備中央町竹荘に、袈裟斬りにされた地蔵・袈裟斬り地蔵がある。竹荘にある総社宮・岩牟良(いわむら)神社近くの明光庵と呼ばれる堂内に安置されている。白大理石製で、高さ77センチの地蔵。名前のとおり左肩から右わきの下にかけて、刀で切られたように折れている。
昔、この付近で化け物が出るというので、一人の侍が確かめに行く。白い大坊主が現れ、侍におおいかぶさってきた。 侍が刀で斬りつけると手応えがあり、化け物は消えた。翌朝、行ってみると、袈裟斬りにされた地蔵が転がっていたと。その地蔵が祀られたのが袈裟斬り地蔵であるという。
地蔵は、姿から見ても古く、江戸期より前のものであることは確実だろう。竹荘88ヶ所霊場87番目の院札所になっている。
みごとな袈裟斬りの姿をこの地蔵でみてほしい。また、この地蔵を斬った刀の切れ味はたいしたものだと思う。
(立石 憲利)