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鉄をめぐる民俗
第34回 「ホトトギスの鳴き声」
いま盛んにホトトギスが鳴いている。ホトトギスの鳴き声を人の言葉で聞く「聞きなし」には、いろいろある。岡山県では「弟恋しや」「弟かわいや」「弟殺して事欠いだ」など。ホトトギスの鳴き声の由来を説明する昔話「ホトトギスと兄弟」は、岡山県でも全国でも多く採録されている。
二人暮らしの兄弟がいて、兄が病気になる。弟は兄の病気が早く治るように、毎日山芋を掘ってきて、うまいところを食べさせる。兄は病気の自分に、これだけうまい物を食べさせてくれるのだから、弟はもっとうまい物を食べているに違いないと、弟の腹を割いてみる。弟は山芋の首など、まずい物ばかり食べていた。兄は後悔し泣き死んで、ホトトギスに生まれかわる。それで「弟恋しや」と鳴くのだ。弟を殺した罰で八千八声鳴かないと餌が食べられないようになったと。
腹を包丁で割き、刃が欠けたので「包丁欠けたか」と鳴くともいう。
徳島県では兄弟が、鍛治屋とその弟子になっている。弟子を殺した鍛治屋がホトトギスになって「弟子恋し、デシコイシ」と鳴くのだと。伝承に鍛治屋がかかわったのだろうか。
一度ホトトギスの鳴き声を聞きなしで聞いてみてほしい。
(立石 憲利)