鉄をめぐる民俗

第33回 「八俣大蛇退治」

 昔話、伝説、神話のなかで刀が大きな役割を果たすものは少ない。そのなかで最も有名なのが八俣大蛇(やまたのおろち)退治の話である。これは『古事記』『日本書紀』に出ており、神話が伝説や昔話にもなって伝えられているものだ。
 スサノオが高天原から追われて、出雲の肥の川(斐伊川)の上流、鳥髪の地に天降る。上流から箸が流れてきたので、川上に人がいると尋ねて行く。アシナツチ、テナツチの両親が娘のクシナダヒメを中にして泣いている。訳を聞くと、毎年八俣の大蛇が現れ、娘を1人ずつ食い、8人の娘が1人になった。今年は、この娘の番だという。
 大蛇は胴は1つだが、頭と尾がそれぞれ8つあり、8つの谷、8つの尾根にもわたる大きなもの。
 スサノオは酒で大蛇を酔わせ、剣で切り割く。尾を切ると刀が欠けたので調べてみると、剣が出てくる。それが草薙の剣で三種の神器の1つだと。
 この話は、斐伊川上流の砂鉄製鉄と関連し、タタラ師たちによる伝承だともいわれる。

(立石 憲利)


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