鉄をめぐる民俗

第7回 「桂(かつら)の木」

 島根県安来市比田にある金屋子神社の桂の木は、金屋子神が白鷺に乗って、降臨された木だと伝える。
奥出雲町の日刀保たたらに祀られている金屋子神社にも、比田の桂から株分けされたものが神木として植えられている。
桂は大木になる。樹齢千年とか何百年といわれる老巨樹もあり、山の神の木として信仰の対象になっているものもある。
桂は年輪が夏目と冬目であまり変わらないうえ、腐りにくいので舟材、建築材、器具用として重宝されてきた。舟といえば、醤油をしぼる舟の材料としても桂が使われている。桂を醤油の木と呼ぶのも、こんなところに起源があるのだろうか。それとも枝を折ってかざむと醤油の香りがするところから命名されたのだろうか。
金屋子神は、なぜ桂の木に降臨したのか。大木であることは降臨の第1の条件だが、それだけではあるまい。白鷺は水辺の鳥、桂は舟材  なぜ、たたらの嫌う水に関連したものが出てくるのか不思議である。

(立石 憲利)


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