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鉄をめぐる民俗
第28回 「刀と渕 - 研ぎ渕」
津山市加茂町に、戦国時代の山城・矢筈山城(高山城とも)跡がある。城主は草苅氏で難攻不落の城といわれた。同町にはこの城にまつわる伝説が多くある。
同町山下を流れる物見川(加茂川の支流)には研ぎ渕と呼ばれる渕がある。矢筈山城の家臣たちが、敵の目を盗んで、この渕で刀を研いだといい、それで研ぎ渕というのだと。
また、この渕は、濁り渕ともいう。刀に付いた血糊(ちのり)を研ぎ落としたため水が濁り、それで濁り渕と呼ばれるようになったと。
同町山下の仏乢(ほとけだわ)にも濁り渕と呼ばれる小さな渕があった。ここでも矢筈山城の家臣が血糊を洗い落としたので、水が濁ったと伝えている。
山下には矢筈城二代目城主・草苅景継の墓もある。
研ぎ渕、濁り渕のように、刀と関連した渕の伝説は県内各地にある。次回も紹介しよう。
(立石 憲利)