鉄をめぐる民俗

第27回 「民謡の中の守り刀」

 守り刀は民謡の中でも歌われている。岡山県の民謡では田植え歌がおもしろいが、備中西北部の大田植え(太鼓田植え)の歌は特によい。サゲが太鼓を叩きながら歌をうたうと、早乙女が付ける。歌は物語風になっていて、歌を聞いているだけで物語の内容が分かり、また神社仏閣、名所の様子も分かる。
 大田植えの歌の中で最も大切なのが、「田の神」で、そこでは田の神の来歴が歌われる。田の神の父母が交わって田の神が産まれ、産湯を使い、産着を着せると歌われてくる、そこで「生れ来て産着立つに小刀は、正宗打ちの小刀で」と歌われる。産着を裁つ小刀は鎌倉後期の刀工・岡崎正宗のものであると。
 さらに「田の神の差したる刀は何処打ちか、国の長州すき清水」と歌われる。この刀は守り刀であり、「国の長州すき清水」という刀だと。これがどのようなものであるかは、不勉強だが、田植え歌にうたわれるほどだから有名なものだろう。(歌詞は新見市哲多町、大久保氏所蔵の田植歌本による)

 このように守り刀は一般によく知られていたことが分かる。
 ちょうど、福岡県の福岡市立美術館と岡山県瀬戸内市長船町の備前長船刀剣博物館で「お守り刀展」が開かれる。

会期:平成19年10月24日(火)~11月4日(日)(福岡会場)
    平成19年11月14日(木)~平成20年1月14日(月)(長船会場)  詳しくはこちら
(立石 憲利)


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