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鉄をめぐる民俗
第13回 「河童と鉄」
プールのなかったころには、川や海、ため池などが子どもの水泳場だった。水死者が出ると「河童に引き込まれた」「河童に尻子(しりご)を抜かれた」ためだと言った。
河童は、カワコ、カーゴ、ゴンゴ、ゴーゴ、エンコーなどと呼ばれる水に棲む妖怪である。河童が棲むのは、水の深い淵が多く、河童淵などと名付けられたところも多い。逆にそういう場所が、子どもの水泳場にも適していたから、河童に取られ水死したのである。
水泳の前にキュウリを川に流し、河童にお願いすると水死しないとも信じられていた。
キュウリは河童の好物である。また、河童は水霊であるので、水のものであるキュウリとは相性がいい。それで河童に取られないと。
河童と鉄はどうか。こんな話がある。ある人が河童を助けたところ、お礼に毎日魚を取って来てくれてた。その人が、ある日、何気なく、河童の魚を置く場所に鍬(くわ)か鎌(かま)を置いていたところ、それ以来魚を持って来なくなったという。
なぜか。河童=水霊と鉄(製品)とは相入れないからだ。
(立石 憲利)