鉄をめぐる民俗

第15回 「鉄の玉」

岡山県北の町・鏡野町となった旧奥津町と旧上斎原村で、家の大黒柱の下などから鉄球が出たという例がいくつかあった。直系10センチ前後の砲丸投げの玉のようなものだ。
 なぜ鉄球が大黒柱の下に埋められたのだろうか。同町羽出、観音寺の住職は「砲丸状のタマハガネ(玉鋼)を素焼きのかめに入れて大黒柱の下に埋めておけば家が栄えるという」と説明する。
 実際にかめに入れられた例もある。玉はズク(鉄)だという例や玉鋼で日本刀を作ったという例もある。いずれにしても発見されるのは、古い家を壊して建て直すときであり、埋めた人と発見者とは異なるから埋めた理由がよく分からない。
 観音寺住職の説明「家が栄える」というのは、家の中心である大黒柱の下に、強固な鉄の玉が埋められているのだから、磐石ということになり、納得できるものだ。
 これらの地域はタタラ製鉄が盛んだったところでもあり、タタラ製鉄とも関連があるようにも思われる。
 それにしても不思議な鉄球だ。同じような例があったらぜひ教えていただきたい。

(立石 憲利)


前の記事へ次の記事へ

ページ上部へ戻る