鉄をめぐる民俗

第22回 「刀の持つ力」

 田や畑のあぜの草刈りをする。よく切れる鎌だと楽に仕事ができるが、よく研いでいない鎌だと大変だ。鎌のなかった昔の人はどうやって伸びる草に対処したのだろうかと思い、あらためて刃物の力を知るのである。

 こんな昔話がある。
 鍛冶屋が長い間かかって、少年のために腰刀を作ってやる。少年は牛飼い子で、牛の番をしに山へ行き、木の下で昼寝する。そこを通りかかった侍が見ると、木の上から大蛇が少年に襲いかかろうとしている。大蛇が少年に近づくと、腰刀が自然に抜けて追い返し、またさやに納まる。また大蛇が襲いかかると、腰刀が抜けて追い返す。侍は少年を起こし、大蛇を退治する。そして、侍の大刀と少年の腰刀を交換する。
 この腰刀のようなものが本当の名刀なのだろう。このように刀の持つ神秘な力が語られている話はよくある。

(立石 憲利)


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