鉄をめぐる民俗

第44回 「小鉄7里に炭3里」

 現在の製鉄でもそうだが、タタラ製鉄でも高炉だけでは鉄はつくれない。
 鉄穴流しで採取された砂鉄、燃料の木炭、生産された鉧(けら)や銑(ずく)を精錬する鍛冶屋-これらの協同によってできるのだ。
 鉄穴場、炭焼き、タタラ場、鍛冶場の四者がうまくかみ合わないといけない。  「小鉄7里に炭3里」という諺があるが、タタラの所在地から鉄穴場は7里(28キロ)も離れていてもよいが、炭は4里(16キロ)までの近くにあることが立地の条件だという。  製鉄には大量の炭が必要なので、遠距離では採算が合わない。
 木炭は、タタラで使うものと鍛冶場で使うものでは異なる。タタラで使う炭は黒炭(オオズミとも)で、炭がまで焼いて製造する。鍛冶場の炭は、小炭(カジヤズミとも)といって、コズミ場という穴を掘り(1.8×1.8×深さ0.6メートル)そこに木を積み重ねて焼き、焼けてしまうと土をかぶせて消す。いわゆる消し炭をつくる。
炭は、カヤで編んだ俵に入れて担いで、タタラや鍛冶場に運んだ。

(立石 憲利)


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