鉄をめぐる民俗

第38回 「鍛冶屋のいない村2」

 第21回で岡山県新見市神郷町神代には鍛冶屋がいないといういわれを書いた。
 鍛冶屋のいない村は、ここだけではなく、他にもあり、同じような伝説がある。

 高梁市備中町と成羽町の境に天神山があり、頂上に天神様が祀られている。
 昔、笠岡の沖の海で船がしばしば難破するので、法印に拝んでもらうと、天神の前を通ったときに難破するという。そこで天神が船を難破させに出かけないよう、成羽町中村の鍛冶屋に鎖をを打ってもらい、それでしばった。その結果、船は難破しなくなったが、天神の罰で、中村では鍛冶屋ができなくなってしまったと。
 同じ成羽町日名でも鍛冶屋がいない。これは、日名の御崎神社が、前を通る人にいろいろな災難を起こした。領主が、御神体の威光が高すぎるからだと、鍛冶屋に命じて片足を曲げて御神体を低くした。災難はなくなったが、日名では鍛冶屋ができなくなったというのだ。

(立石 憲利)


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