鉄をめぐる民俗

第48回(最終回) 「和鉄はすごい」

 5年前、島根県奥出雲町にある日刀保たたらを見学したときの感動は今も忘れられない。
 それをきっかけに岡山県瀬戸内市の長船刀剣博物館での日本刀の鍛錬や、まばゆく光る日本刀の展示を見ることが多くなった。刀の輝きに、炉から花火を散らして出てくるまっ赤な鉧(けら)の固まりの輝きが重なる。
 岡山県内にもたたらや刀剣の施設はあるが、島根県では、それら施設を「たたらの歴史街道」として宣伝、多くの人が訪れている。

 このほど、あらためて歴史街道を歩いてみた。最初に安来市西比田の金屋子神社に参拝した。私の住む備中の吉備津神社から飛来して西比田にやって来たのだという伝承を思い出した。金屋子神話民俗館、奥出雲町の絲原記念館、奥出雲たたらと刀剣館、日刀保たたらと回り、最後に雲南市の菅谷たたら、鉄の歴史博物館を訪ねた。和鉄のすばらしさとすごさに感動した旅だった。そして記念に台所で使用する包丁を求めた。

 書斎では「日々笑顔」と刻された和鉄の文鎮、姫路白鷺城の古釘で作られたペーパーナイフを愛用している。表面は黒いが、中は鉧のように輝いているだろう。

 4年間にわたり思いつくままを記してきたが今回が最終回になる。長い間、ご愛読ありがとうございました。

(立石 憲利)


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