鉄をめぐる民俗

第14回 「味噌買橋」

 製鉄に関連する民話は結構たくさんある。そのなかの一つに「味噌買橋」がある。本格昔話の一つだ。
 正直者の炭焼きが、味噌買橋のたもとに立っているとよいことが聞けるという夢を見る。立っていると、何日目かに橋の近くにある豆腐屋が声を掛けてきて、自分の見た夢を話す。炭焼きは自分の炭焼きがまの近くの様子とよく似ているので、とんで帰り、その場所を掘るとお金(財宝)が埋まっていた。
 こんな内容である。
 この話のお金(財宝)というのは、砂鉄や鉱山であり、それを発見するのが製錬に必要な炭を生産する炭焼きとなっている。「炭焼き長者」と相通じるものがある話だ。
 橋が占いの場所であることは分かるが、なぜ味噌買橋なのか、夢の話をするのが豆腐屋なのかよく分からない。
 味噌買橋の話は、全国でみても報告例の少ない話である。この話を運んだのは、各地を移動するタタラ関係者か、または炭焼きであろう。 

(立石 憲利)


前の記事へ次の記事へ

ページ上部へ戻る