鉄をめぐる民俗

第19回 「大槌島・小槌島」

大槌島・小槌島

 前回、鍛冶屋のことを記したので、今回は玉野市日比の刀鍛冶伝説について記してみよう。
 昔、玉野市日比に腕の確かな刀鍛冶がいた。精魂を傾けて刀を打っても、どうしても納得のいく刀が出来なかった。
 「どうもうかしい。こりゃ鉄が悪いか、炭が悪いか、水が悪いか、そのうちのどれかに違いない」
調べてみると、水に原因があることが分かった。近くの湧水を使っていたのだが、水に塩分を含んでいたのだ。
 刀鍛冶は、海の近くの日比では、よい水が出ないのがもっともだと、他に移ることにした。それまで使っていた大小の金槌を両手に持って海に投げ捨てた。小さい金槌は遠くまでとび、大きい金槌は近くに落ちた。そして島に化して大槌島(玉野市と香川県高松市境)と小槌島(高松市)になった。島は槌の形をしている。
金床は、海に沈んで金床ソワ(岩礁)になった。玉野沖で採れるタイは、金床ソワにふれて鮮やかな金色をした桜ダイになるのだ。
 刀鍛冶は日比を去って備前長船にやってきて、長船の刀鍛冶の始祖になったということだ。
 備前長船の刀鍛冶の始祖が日比からやって来たという話で、伝説にしてもおもしろい。

(立石 憲利)


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