鉄をめぐる民俗

第47回 「たたら歌」

昔は仕事と歌がしっかりと結びついていた。いまテレビやラジオなどで歌われている民謡の多くは仕事歌で、仕事の中で歌われていたものだ。
 製鉄に関連する仕事の中でも歌があった。たたら歌、鍛冶屋歌、荷担ぎ歌、木こり歌など、それぞれの労働の場で、必ず歌が歌われた。

 たたら歌をいくつか紹介しよう。

  昨日こもりで、今朝あげしおで
  池に小金が舞い遊ぶ

  昨日こもりで、今朝あげしおで
  湯ばねそろえてとろとろと

 ムラゲ(村下)は、たたら場に入って3日3晩(1日交代とも)、そこに籠って仕事に従事する。鋼や銑鉄の塊「鉧(けら)」が出来ると炉をこわして鉧出しとなる。火花を散らしながら金池に入れられ、もうもうと湯煙が立つ。そんな状況を歌ったものだ。

  千駄万駄の金吹き出して
  ムラゲ様ともいわれたい

  ムラゲ様とは どなたのことか
  行けばたたらの左手に

 ムラゲは、たたらの総責任者・技師長であり、尊敬されていた様子がわかる歌だ。

(立石 憲利)


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