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第1篇 「現代刀」の定義についての再検討
現代刀の二つの潮流
 一方、昭和20年まで一貫して軍刀を作り続けた日本刀鍛錬会にしても、その総数はおよそ8,100振にすぎない。靖國鑪で得た和鋼・和鉄をもっぱら素材とし、古式鍛錬を踏襲した結果、刀匠1人当たり(先手2人を含む)の月間製作数は20振程度にとどまっている。現在、内外で靖國刀が再評価されているのは、そのことに起因する。
 玉鋼や包丁鉄を支給されて作刀に当たった陸海軍受命刀匠にしても、製作数のノルマは同程度のものであった。年を追うごとに激増したのは、さまざまな洋鋼材を用いた粗製の軍刀である。既に製品化した鋼材をそのまま打ち延ばすわけだから、量産も容易となる。美術的な価値は別として、軍刀の機能は満たしたものであろう。今日、その多くが登録の対象とならないのは、法の原則に照らせばやむを得ないものがある。すなわち、満鉄刀や造兵刀などと呼ばれる素延べ刀、特殊鋼刀は、日本刀と見なされていない。
 以上見たように、戦前の現代刀には「日本刀の復興」と、「軍刀の製作」という目的を異にする二つの流れがあった。その潮流は、需要に突き動かされて「軍刀」が次第に奔流となり、しかも内実は量産刀が圧倒していったのである。
<注> 「現代刀」とほぼ同義として誤用される言葉に「昭和刀」がある。「現代刀」の一部を占めることは否定できないが、実態は語感から受ける印象と全く異なる。これについては、早くも昭和10年刊『国民百科大辞典』(冨山房)に該当項目があり、稲田慶二(『刀剣趣味』主幹)が次のように記している。

  「最近日本刀熱ノ再興ニツレテ粗製濫造ヤ模作刀ガ多ク流行シテ之ヲ世人ガ<昭和刀>ト呼ブ。随テ昭和年間ニ出来タ総テノ刀トイフ広義ノ意味デナイ。之ハ古来ノ日本刀鍛錬ノ方式ニヨラズ、一本ノ洋鉄ヲ材料トシテ素延ニシタモノデ、極安価ニ出来ル安価ナ刀。日本刀ノ形態ハ有スルガ、品質ニ於テ全然異ル。但、巧ニ模作サレタルモノハ素人ニ其判別ガ容易デナイ。」

  従って、昭和刀は銃砲刀剣類登録規則第4条「鑑定の基準」に該当しない。